ピロリ菌感染とは?
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は胃粘膜に感染して胃炎を起こします。慢性胃炎の状態が持続すると以下のような病態を引き起こします。
- 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)
- 胃MALTリンパ腫
- 胃過形成性ポリープ
- H.pylori関連ディスペプシア
- 胃食道逆流症(GERD)
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
- 鉄欠乏性貧血
ピロリ菌に感染する原因(感染経路)
はっきりとは解明されていませんが、井戸水や口移しなどの経口感染と考えられています。主な感染時期は乳幼児期(5歳くらいまで)で、それ以降の感染は少ないといわれています。
ピロリ菌は遺伝する?
ピロリ菌が親から子へと遺伝することはありません。
ピロリ菌に感染した人の唾液を介した感染が考えられており、離乳食期の保護者による口移しはリスクの高い行為といえるので、注意が必要です。
ピロリ菌はキス・性行為でうつる?
いずれも感染の心配はありません。
ピロリ菌感染は胃がんリスクが高まります
ピロリ菌に感染していない人に比べ、感染している人の胃癌リスクは15倍以上といわれています。ピロリ菌感染を放置していると、胃粘膜萎縮が進行し(萎縮性胃炎)胃癌のリスクを高めてしまいます。
ピロリ菌の検査を受けたことのない方は、早めに検査を、そして必要に応じて除菌療法を受けることをおすすめします。
ピロリ菌感染の検査
尿素呼気試験
13C-尿素を含む検査薬の服用前後に、吐息を採取し成分を分析します。
ピロリ菌が有するウレアーゼ活性が、尿素を二酸化炭素とアンモニアへと分解する性質を持つことを利用した、非常に精度の高い検査です。 除菌判定にも用いることができます。
便中抗原検査
便中のピロリ菌に対する抗原の有無を調べます。
除菌判定にも用いることができます。
血中・尿中抗体検査
血液または尿の中の、ピロリ菌感染によって産生される抗体の有無を調べます。
内視鏡検査
ピロリ菌感染を確定するものではありませんが、胃粘膜を観察し発赤、白色粘液の付着、ひだの肥厚などが認められた場合に、感染を疑います。
鏡検法
内視鏡検査で採取した組織を染色し、顕微鏡で観察してピロリ菌の有無を判定します。
迅速ウレアーゼ試験
内視鏡検査で採取した組織を検査試薬内に入れ、pH指示薬の色調の変化で判定します。
ピロリ菌が有するウレアーゼ活性により、アンモニア(アルカリ性)を発生する性質を利用した検査です。
培養法
内視鏡検査で採取した組織から菌を分離し培養させることで、ピロリ菌の有無を判定する検査です。
ピロリ菌の治療
ピロリ菌の治療では、ピロリ菌の除菌療法を行います。3つの薬を毎日2回、連続して7日間服用します。その後4週間以上あけて除菌判定を行います。
一次除菌が失敗に終わった場合には、薬の種類を替えて二次除菌へと進みます。
ピロリ菌除菌が成功する確率はどのくらい?
一次除菌の成功率は、80%ほどです。
二次除菌では成功率はさらに高くなり90%に達します。
除菌に失敗する場合ってどんなとき?
除菌の失敗例のうちほとんどを占めるのが、指示通りの服用ができなかった(忘れてしまった)ケースです。
除菌に失敗すると、ピロリ菌が耐性を持ってしまうことがあるため、十分な注意が必要です。
除菌の副作用はある?
下痢、味覚異常、発疹などいくつかの副作用が報告されています。
症状の程度によりますが、患者様と相談した上で除菌を継続することが多くなります。
ショックやアナフィラキシー様症状(呼吸困難、全身紅潮など)、血便が現れた場合には、直ちに服用を中止し、ご連絡ください。